日華化学
日華化学は、基幹系システムの刷新に合わせて、全社システムのアーキテクチャーを変更した開発を進める。個別の各システムにSaaSを使い、それらの連携用に業務基盤の構築を推進。
Business goals
福井県を拠点に繊維加工薬剤を中心とした事業を営む日華化学。主に、衣類の撥水剤などの化学品事業とヘアケア剤などの化粧品事業という2つのセグメントを展開しています。海外は9つの国・地域に16拠点を置き、海外売上高比率が2024年通期実績で49%を占めるグローバル企業です。
中期経営計画において「事業構造の大転換」を掲げる同社は、その柱として化粧品事業の拡大を進行中。2027年には、スマートファクトリーとして生産キャパシティを現状の約4倍とする新たな工場を稼働予定です。
生産性改革も基本戦略の1つとして掲げています。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して、効率向上やデータ活用による新たな価値創出を目指します。
Integration Challenges
日華化学では、基幹系システムの切り替えが迫っていました。そのタイミングを、単なるERPの入れ替えで終わらせず、業務全体を見直すチャンスと捉えて、総合的な視点から全体のシステムを見直す方針を採用しました。既存の基幹系システムでは市場の変化についていけないと考えたことが、その要因です。
検討の結果、すべてのシステムをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)で実現する方針を決定。基幹システムとして米インフォアのSaaS型ERP「Infor M3」を導入するほか、「Snowflake」のクラウドデータプラットフォームや「ServiceNow」のAIプラットフォームなど複数のSaaSで構成するマルチSaaSのアーキテクチャーを採用します。
ただし、マルチSaaSには課題がありました。ERPシステムの導入後に、必要なシステムとして部分的にSaaSを追加導入してきたときに、接続の問題による手戻りなどで苦労した経験があります。個々に構築したシステムを後からつなげる場合、失敗の手戻りなどのリスクが大きいと感じていました。
How Boomi Helped
今回のプロジェクトは全社的なシステムアーキテクチャーを見直すきっかけでもあります。新たなシステムを導入する際にも、システム間をつなぐデータ連携で苦労したくありません。これまで何度も手戻りが生じてきたのは、個別にシステムを構築した後にシステム間のつなぎ方を考えるという構築手順に根本的な問題がありました。
そこで日華化学が考えたのが、各種SaaSを接続するための業務基盤を構築することです。そのための統合プラットフォームとして、さまざまなアプリケーションやデータソースを容易につなげられるBoomiを採用しました。
業務基盤におけるBoomiの導入パートナーとして同社が支援を依頼したのはパワーソリューションズです。グローバルSaaS製品の導入経験が豊富なことに加え、マルチSaaSの取り組みに長けているというのが同社を選んだ理由でした。
導入プロセスではBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を重視しました。そのために、業務部門を中心とした体制を組んでいます。従来のERPシステムをIT部門が主導して導入した際に、業務部門との摩擦が生じやすいという経験をしたからです。
今回のシステム構築では、プロジェクトオーナーとプロジェクトリーダーを業務部門が担当しています。プロジェクトの途中ではなく、最初から業務部門とともに進めることが重要だからです。
特にSaaSの導入においては、業務部門のニーズとシステムの間にズレが生じやすいという問題があります。スクラッチ開発によるオーダーメイドとは違い、SaaSではソフトウエアやツールに業務側の運用を合わせる必要があります。そのため、業務部門を最初から巻き込むことが重要となるわけです。
Results
現在、ERP刷新とマルチSaaS連携を進めている同社では、順調な導入につなげられた鍵として3つがあると考えています。
1つめは、基幹系システムの刷新を部分的ではなく、業務全体およびシステムアーキテクチャー全体の刷新につなげたことです。いまや基幹系を中心にさまざまなシステムが連携することが必要です。ERPシステムの刷新といった大規模開発では、ついつい対象システムに意識が向いてしまいがちですが、むしろ周辺システムまで含めた全体最適を図るチャンスと捉えることが重要です。
2つめは、システム間の接続方法について、Boomiを用いた業務基盤によって個々のシステムを導入する前に標準化したことです。これにより、システム間の接続に問題があった場合でも早期に発見できるほか、設計変更を最小化できるため、新たなSaaSを導入する際の作業を容易にします。
3つめが、プロジェクト体制において、業務部門を最初から巻き込んだことです。これにより、IT部門と業務部門の間の認識のずれを少なくなるのに加え、業務部門からの要求の変化に対しても受け入れやすくなる利点があります。業務側の中心メンバーがプロジェクトに参画してレビューを重ねることで、設計と要求の食い違いも少なくなります。
Boomiを活用する業務基盤が真価を発揮するのは、今後さまざまなSaaSがつながり、データやプロセスを連携してDXを実現できたときです。SaaSの普及によって、個々のシステムをスクラッチで開発するのではなく、SaaSをつなげて活用することが重要になっています。日華化学は事業転換や海外市場の進出を進めるなかで、市場変化に即応できる基盤をいち早く実現できたといえます。
