JAL
日本航空は、業務領域ごとに分断されていたデータ連携基盤の全面改革を推進。合わせて、ユーザー部門によるIT開発が可能なシステム環境と開発支援・教育体制を整備しました。
Business goals
日本を代表する航空会社であるJALグループは、国内線133路線、国際線66路線の計199路線に就航。1日平均1,000便を運航し、年間搭乗者数は約4,600万人に上ります。昨今はインバウンド需要を取り込みつつ、非航空事業領域での収益向上も図り成長を続けています。
2025年度に利払前・税引前利益(EBIT)で2,000億円を達成したJALグループは、2028年度には2,300億円を目指す経営目標を掲げています。そのために、国際線の規模拡大や国内線の収益向上、生産性向上といった既存領域での事業構造改革を進めるほか、新領域での事業創出につながる事業横断の取り組みとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を推進します。
DX戦略では、AI(人工知能)やデータを中心に据え、マーケティングの高度化、生産性向上、そして新たな価値創造に積極的に取り組んでいます。社内の各種システムに保有するデータをいかに容易に他システムで活用できるかは、ビジネスのスピードに直結します。そのため、データ連携基盤を整備することがDXの推進にあたり極めて重要でした。
Integration Challenges
JALの社内システムは多岐にわたります。約200あるシステムの間で約2,500のインターフェースを使ってデータ連携を図っており非常に複雑化しているという課題がありました。
従来はデータ連携のために「旅客系データ連携」「運航系データ連携」「整備・貨物系データ連携」といった業務領域ごとに異なる3つの基盤を運用してきました。ところが、業務領域をまたぐ大規模な連携が増えるにつれて、業務領域ごとに分けていた基盤が複雑化・多重化する問題が生じました。
結果として、新たなデータ連携のインターフェースを開発する負荷が大きくなってしまい、ビジネスニーズへの対応の遅延、老朽化したシステムの改修費用の肥大化、そして障害発生部分の特定に時間を要する、といった課題に直面していました。さらに、各連携基盤で異なるアーキテクチャーを採用していたことで、開発や維持管理に必要なIT人材の確保やスキル育成が非効率となる課題も抱えていました。
How Boomi Helped
これらの課題を解決するため、同社は単なるシステムの刷新ではなく、連携基盤全体を変革する「OneBridgeプロジェクト」を立ち上げました。本プロジェクトにはパートナーとして、長年インフラからクラウド化、CCoE(Cloud Center of Excellence)構築などを支援する野村総合研究所(NRI)が参画。新データ連携基盤で重視したことの1つが、システムの重要度や特性に応じて接続先を決定する仕組みです。迅速な開発を実現するため、重要度の低い単純な接続やファイル転送にはiPaaS(Integration Platform as a Service)を活用し、周辺システムの担当者自身がローコードで開発できるセルフサービス開発型を導入しました。
新データ連携基盤としてBoomiを選定した理由の1つはローコード開発が可能な点で、開発の迅速化を期待しています。既存のレガシーシステム、SalesforceやServiceNowなどの多様なSaaSとの連携を可能にする豊富なコネクタを標準搭載している点も評価しました。さらに国際規格(ISO、SOC1/2など)に準拠した高セキュリティのクラウド環境のため、管理や運用負荷の低減を実現する点もポイントでした。もちろん、他社に先駆けてBoomiがAI(人工知能)を実装していることも、今後の業務効率化への期待につながっています。
Boomiの導入に当たっては、スピーディな開発を強く意識してユーザー開発部隊を編成しました。アジャイル開発の専門家とBoomiの有識者をアサインし、Boomiの体系化された教育プログラム(ラーニングパス)を活用して、短期間での立ち上げを実現しました。さらに、開発者のすそ野を広げるため、iPaaS開発マニュアルの整備やBoomi活用を促すポータルサイトも構築しています。
Results
ユーザー開発部隊を編成したこともあり、Boomi上で開発期間を短縮し、新たなビジネスニーズに迅速に対応できる環境が整いました。加えて、業務領域ごとに分けていた連携基盤のアーキテクチャーをシンプルにしたことで、老朽化したシステムの改修も容易になり、障害発生時の影響を最小化できるなど、運用効率を改善しています。
Boomiの明確で試算容易なライセンス体系(接続数やインターフェースごとの課金など)は、利用の増加に伴い費用が増えやすいデータ量による課金モデルとは異なり、予算・投資効果の把握を容易にしました。OneBridgeプロジェクトは今後、AIを活用して開発プロセスを改革し、さらなるユーザー開発の促進と生産性向上を図る予定です。具体的には、AIでデータ連携の開発を自動化する「Boomi AI」とAIエージェントの管理を実施する「Boomi Agentstudio」を活用します。
AIを活用したプロセス改革として現在、3つの取り組みを進めています。1つはドキュメント(仕様書)の作成支援で、開発したプロセスからドキュメントを自動生成します。2つめは開発支援で、開発要件に類似する過去のデータ連携を基にデータ連携プロセスの提案を自動化したり、設計書に沿ったデータ連携プロセスを自動生成したりします。3つめはBoomiの利用サポートで、Boomiの機能や社内ナレッジなどを、自然言語で検索・対話できるようにします。これは、新規担当者がBoomiを習得しやすくする狙いがあります。iPaaSを予定通り2026年1月にリリースし、今後はさらなる利用拡大を目指していきます。
