ITとビジネス部門の間に昔からある溝は、「ROI(投資対効果)」という3文字の捉え方の違いにあります。
両チームの間では、何をもって投資の成功とするかという定義で衝突することがあります。IT部門にとっての成果とは、システムの負債を減らし、安定稼働や拡張性、ガバナンスを強化することにあります。対してビジネス部門、特に財務責任者(CFO)が求めるのは、コスト削減や収益向上、そして生産性の改善です。評価基準も話す言葉もあまりに違うため、大切なことが互いに理解できず、結果として緊張感を生んでしまうのです。
Nucleus Research の主任アナリスト、アレクサンダー・ワーム氏は、この両者の溝を鋭い言葉で表現しています。
「テクノロジーが複雑になるほど、ビジネス的なROIの説明は、逆にシンプルでなければならない」と言います。
価値の置きどころが違うからこそ、「技術的な価値を、財務担当者が納得できる言葉へ変えることが必要だ」とワーム氏は付け加えます。だからこそNucleus Researchは、技術的な進化がお金の価値を生み出したかを証明するために、検証済みの確かな手法で事例を分析しています。
その具体例が、ワーム氏が執筆した最新の調査レポートある地方銀行が、ローンの審査や顧客の新規登録、口座の維持管理といった基幹業務の自動化に Boomi Enterprise Platform を導入したところ、わずか9.9ヶ月で投資を回収し、97%という高いROIを達成したことがわかりました。
ワーム氏は今回の調査を通じて、IT部門とビジネス部門がどのようにコミュニケーションの壁を乗り越えるべきかを語っています。また、そのステップこそが、AIや自律型エージェントといった最先端の技術を活用するために欠かせない準備であるとも述べています。ここからは、そのインタビューの内容を、要点を絞ってお届けします。
なぜITチームは、経営層が考えるROIを意識すべきなのでしょうか?
アレクサンダー・ワーム氏: プラットフォームの技術的なすごさばかりに目を向けすぎると、ビジネス側にとって本当に重要な「ビジネスへの影響」を見失ってしまうことがあります。私たちNucleus Researchのアナリストの役割は、テクノロジーがもたらすメリットをシンプルにすることです。具体的には、開発者や現場の担当者から聞いた「他社とは違う技術的な強み」を、CFO(最高財務責任者)が理解できる言葉へと変換します。たとえば、「この自動化やワークフロー開発によって、これだけの手作業がなくなります。その結果、これだけの時間とコストが浮きます」といった説明をすることで、「技術で何ができるか」が「ビジネスをどう前進させるか」につながる方法を示します。これは、技術の専門領域にいる方にとっては、見つけるのが難しい視点だったりするのです。
Nucleus Researchのケーススタディの価値を語る上で、良い導入になりますね。ROIを算出するための具体的な手法について説明していただけますか?
アレクサンダー・ワーム:私たちは 私たちは、企業のストーリーを3つの領域に分解して分析しています。1つ目は、ソリューションを稼働させるための「初期コスト」です。サブスクリプション料金や導入費用などがこれにあたります。 2つ目は、管理コストや利用に関連する人件費といった「継続的なコスト」を評価します。 そして3つ目が、誰もが関心を寄せる「メリット」の調査です。メリットは多岐にわたリマスが、最終的には「コスト削減」「生産性の向上」「収益性の向上」という3つのカテゴリーとして考えます。今回の調査を含め、 iPaaS(データ連携のためのプラットフォームサービス)の場合、その価値は「コスト削減」と「生産性の向上」にあります。以前はこれらのワークフローの多くが手作業で行われていたため、目に見えて時間を削減することができました。現場の担当者にとって、その時間を節約できることには大きな価値があります。現場の担当者の給与と、その作業に費やしていた時間を計算し、その時間が「より価値のある仕事」に向けられたと仮定します。iPaaSにおいてROIの大部分を占めるのは、こうした「時間の節約」から生まれる価値だと言えます。
今回の事例で、具体的にどのような発見があったのか教えてください。
アレクサンダー・ワーム氏: 金融機関のシステム連携には、特有の難しさがあります。仕組みが非常に複雑なうえ、データの扱いに関する厳しい規制も守らなければなりません。特に「ローンの審査・処理」は業務量が膨大なため、うまく効率化できないと組織にとって大きなコスト負担になってしまいます。今回の調査で最大の焦点となったのは、ローン業務を中心とした自動化です。例えばコロナ禍では、政府の雇用維持策(PPPローン)などの影響で、銀行のローン処理件数はかつてない規模にまで膨れ上がりました。そこでBoomiのiPaaSを導入し、ローンの記帳や顧客の新規登録、口座の維持管理といった業務を自動化しました。これまではすべての工程を手作業で行っていましたが、Boomiを活用し自動で処理できるようにしたことで、システムの連携と効率化の両面で、大きなメリットを得ることができたのです。
この事例のメリットは、他の企業でも同じように期待できるものでしょうか?
アレクサンダー・ワーム氏:私たちのゴールは、事例を読み終えた方が「なるほど、実際にこういうことが起きたのか」と納得できることです。技術がどう利益につながるのかという疑問を解消し、「これを自社ならどう使うか?」と考えてもらうことが大切だと思っています。今回の金融業界の事例は、ある種のストレステストのようなものだと考えてみてください。銀行特有の厳しいルールや特殊なシステム、膨大な取引量がある環境での成功例だからです。これほど複雑な環境で成果が出たということは、このソリューションが限界まで追い込まれた時でも実力を発揮できることを示しています。例えば顧客の登録作業を自動化・スピードアップすることや社内のシステムをつなぐことの価値は、どんな組織であっても実感できるはずです。今の時代、社内に複数のシステムや業務フローを抱えていない企業などありませんから。それこそが、iPaaSが求められる理由です。この事例を通じて、「もし自社の開発スピードが上がったら?」「顧客への対応がもっと早くなったら?」「管理コストが減ったら?」と、ぜひ自社に当てはめて想像してみてください。
まるで、技術職と財務職の「通訳者」のようですね。
アレクサンダー・ワーム氏: 結局のところ、要点を突いた「良い質問」をいくつか投げかけられるかどうかにかかっています。開発者や技術担当者と対話し、彼らの仕事が「高いレベルでどんな価値を生んでいるか」を意識してもらうのです。核心を突く2〜3の重要な問いを投げることができれば、財務的なリターン(収益)の根源を明確にすることができます。それが「通訳」の役割と言えるかもしれません。あるいは、最近のAIアシスタントのように、深掘りするための質問を次々と出すような存在でしょうか。私はまだAIのように自動化はされていませんけどね。
AIといえば、AIの普及によってiPaaSの重要性はさらに高まっているとお考えですか?
アレクサンダー・ワーム氏: それは、AIをどう捉えるかによります。AIを特定のアプリや一部の業務だけで使うツールと考えるか、それともビジネスのあらゆる領域で、システムをまたいで活用するものと考えるかです。私は間違いなく後者になると思っています。そうなると、組織全体のデータを一つにまとめ、状況を正しく把握するためのiPaaSが非常に重要になります。もし、まだ手作業でデータ入力や検証、システム間のデータが一致しているか確認を行なっているようでは、AIや自律型エージェントといった「より高度な機能」を活用するための土台が整っているとは言えません。
注目しているAIのトレンドはありますか?
アレクサンダー・ワーム氏:AIの本当の凄さは、これまで自動化できなかった仕事までこなせるようになった点にあります。AIが柔軟に動いてくれるおかげで、自動化の可能性が一気に広がりました。世の中では「AIエージェント」や「推論能力」といった派手な見出しが飛び交っていますが、企業が実際に価値を実感しているのは、もっと現実的な部分です。つまり、日々のムダな作業をAIに任せて自分の時間を取り戻し、単純なルーチンワークを自動化すること。特に業務量が多く、ビジネスへの影響が大きい分野で実現することです。そこにこそ、AIがもたらす本物の価値だと思います。
投資対効果97%という驚異的な数字の裏付けとなる、詳細な財務分析レポート「地方銀行のBoomi導入ROI事例」をぜひダウンロードしてご覧ください。
