2027年までにSAP PI/POから移行し、連携基盤を刷新する方法

著者: Hunter Sones
発行日 2026年3月30日

SAP PI/POの標準保守は2027年12月に終了しますしかし、この期限を単なるリフトアンドシフト移行として扱うだけでは、せっかくの機会を逃しかねません。PI/POが現在のアーキテクチャの中核にある場合、既存のインターフェースをそのまま移すだけでは、同じ複雑さ、カスタムスクリプト、運用上のボトルネックを新しい環境に持ち込むことになります。

むしろ今は、連携基盤をモダナイズする貴重なタイミングです。

日々の運用をシンプルにし、ローコード開発とAIを活用して導入や変更対応を迅速化し、SAP環境だけでなくテクノロジー全体を支える俊敏な基盤を整える好機でもあります。以下では、Boomi Enterprise Platformを活用してモダナイズを進める実践的な考え方をご紹介します。

このブログでわかること

  • PI/POからの移行が、単なる置き換えではなく、より広いモダナイゼーション施策として必要な理由
  • 「モダナイズ」とは実際に何を指すのか
  • BoomiがPI/POからの移行とモダナイズをどのように支援するのか
  • モダナイズに向けた移行方針をどう整理し始めるべきか

なぜPI/PO移行にはモダナイゼーション戦略が必要なのか

PI/POは、単なるSAP間のメッセージ連携にとどまることはほとんどありません。時間の経過とともに、次のような領域まで広がっていく傾向があります。

  • SaaSアプリケーションやデータプラットフォームなど、SAPと非SAP間の連携
  • バッチ処理やデータ連携
  • パートナー連携やB2B/EDI連携(EDI:企業間取引データを電子的にやり取りする仕組み)
  • 壊れやすく、誰も手を入れたがらないカスタムABAPコード(ABAP:SAP向けに使われるプログラミング言語)

そのため、目的が単に「PI/POから移行すること」だけだと、新しい環境でも同じ複雑さを再現してしまいがちです。

モダナイゼーションはそれとは異なります。目指すべきは、移行後に次の状態を実現することです。

  • 保守すべきカスタムコードやスクリプトを減らす
  • 運用負荷を抑える
  • 新たな要件への対応を迅速化する
  • 特定ベンダーの製品群だけでなく、自社のテクノロジー全体に適したプラットフォームを整える

モダンな連携アーキテクチャを定義する

多くの企業では、段階的にモダナイズを進めます。目的は、連携を構築しやすくし、変更しやすくし、長期的に運用しやすくすることです。

1. 可能な限り個別開発を減らす

カスタムスクリプトや使い回せない個別対応は、すべて将来の保守負担になります。より効率的なのは、標準パターン、再利用可能なコンポーネント、そして適切な場面でのローコード開発を活用することです。

2. 変更しやすくする

ミドルウェア(middleware:異なるシステムやアプリケーションの間に入り、データ連携や処理を支える中間基盤)が複雑だからといって、企業のスピードが落ちるわけにはいきません。変更のたびに数週間かかり、対応できるのが一部の専門人材に限られている状態では、未対応の案件が積み上がり、リスクも高まります。その結果、企業は時間とコストの両面で負担を抱えることになります。

3. 連携フローだけでなく、その先までモダナイズする

多くの企業は、単に「連携」だけを必要としているわけではありません。必要なのは、次のような機能を整理された形で管理できることです。

  • iPaaS(Integration platform as a service:クラウド上でシステム同士の連携を構築・運用できる基盤)

  • API管理(APIM:APIを公開・保護・統制するための管理機能)
  • データ連携/データパイプライン(data movement / pipelines:複数のシステム間でデータを移動・処理する仕組み)
  • ゴールデンレコード(golden records:企業内で正しい基準データとして扱う統一されたマスターデータ)
  • エージェント型ワークフロー(agentic workflows:AIエージェントが判断や処理に関与しながら進む業務フロー)
  • AIエージェントガバナンス(AI agent governance:AIエージェントの利用ルールや責任範囲を管理・統制する仕組み)

これらが複数のツールやチームに分散していると、対応スピードは落ちます。ガバナンスも難しくなり、誰が責任を持つのかも曖昧になります。その結果、企業全体の俊敏性が低下します。AIの進化が速い今、その影響はこれまで以上に大きくなります。

Boomi Enterprise PlatformでPI/POのモダナイズを加速する

多くのPI/POユーザーにとって、SAP Integration Suiteは次の移行先として最もわかりやすい選択肢に見えるかもしれません。ただし、1つの選択肢に絞る前に、いくつかのトレードオフ(trade-off:何かを得る代わりに別の何かを手放す関係)を見極めることが重要です。特に、日々の導入・変更対応のスピード、非SAP領域までどこまでカバーできるか、プラットフォームの乱立、ハイブリッド運用(hybrid operations:クラウドとオンプレミスが混在する環境での運用)といった観点は確認すべきです。

重要なのは、単に「どのツールを選ぶか」ではありません。長期的に見て、複雑さとコストを抑えられる形でモダナイズすることです。

ローコード開発、再利用可能なコンポーネント、AIでモダナイズを加速する

Boomiは、すべてのインターフェースを個別開発にせずに、チームがスピーディーに進められるよう設計されています。これは、PI/POのフローを数十本、場合によっては数百本移行する際に、変更しにくい連携基盤をそのまま再現しないために重要です。

そのスピードを支える大きな要素が、コンポーネントの再利用性です。同じエンドポイント設定、マッピング(mapping:異なるシステム間でデータ項目を対応付ける設定)、ユーティリティロジックを複数のフローごとに作り直すのではなく、Boomiは、一元管理された再利用可能な構成要素を前提に設計されています。たとえば、接続設定、オペレーション、マップ、共有サブプロセスロジックなどを共通化できます。これにより、チームは標準パターンを一度整備すれば、広く使い回せるようになり、重複作業と運用負荷を減らせます。

これにより、次のような効果が得られます。

  • 開発と移行のスピード向上:同じものを繰り返し作り直すのではなく、既存コンポーネントを組み合わせて共通パターンを素早く構築できます。
  • ガバナンスの一貫性向上:共有コンポーネントと依存関係の可視化により、どの変更がどこに影響するのかをチームで把握しやすくなります。
  • 保守負荷の軽減:認証情報、エンドポイント、スキーマ(schema:データの構造や項目定義)に変更があった際も、重複した設定やスクリプトを個別に追いかける負担を減らせます。
  • 運用の簡素化:似たようなフローが乱立した環境よりも、標準化された連携基盤のほうが監視やトラブルシュートを行いやすくなります。

SAP Integration Suiteも選択肢に入っている場合は、実際の作業負荷がどこに発生するのかを慎重に見る必要があります。どこまでが画面上で扱えるローコード開発(low-code:最小限のコードでアプリケーションや連携を構築する開発手法)なのか、どこからカスタムのGroovyスクリプト(Groovy scripting:Groovyというプログラミング言語で個別に処理を書く実装)に依存するのか、さらに他のSAPサービスとの追加調整がどれだけ必要になるのかは確認すべきポイントです。
Boomiのローコード中心のアプローチであれば、標準パターンを整えやすく、コンポーネントも再利用しやすくなるため、カスタムコードを抑えながら連携を構築しやすくなります。さらに、Boomiに組み込まれたプラットフォームAIエージェント(platform AI agents:開発や運用支援を行う、プラットフォーム内蔵のAI機能)は、構築作業やトラブルシュートのスピード向上にも役立ちます。特に大規模な企業環境では、真のコストは最初の構築そのものではなく、その後何年にもわたって発生する変更対応にあるため、この差は重要です。

Boomi for SAPでSAPの複雑さを抑える

SAP連携で特に難しいのは、連携フローそのものではなく、必要なSAPデータやオブジェクトを使いやすい形で取り出せるようにすることです。多くのチームでは、SAPデータにアクセスするだけのためにカスタムABAP(ABAP:SAP向けに使われるプログラミング言語)を書かざるを得ず、その結果、導入や変更対応が遅くなり、保守コストが増え、運用リスクも高まります。

Boomi for SAPは、その負担を減らすために設計されています。SAPデータへのアクセスや連携設定を、次のような形でよりシンプルにします:

  • SAP連携に必要な専門開発を最小限に抑える: Boomi for SAPのUI上から多くのSAPオブジェクトにアクセスできるため、SAPと連携するたびにABAPやOData(OData:API経由でデータを取得・更新するための標準的なデータ連携方式)などの専門的なSAP開発に大きく依存せずに済みます。
  • SAPオブジェクトへの対応範囲が広い:基本的なJCoパターン(JCo:SAPと外部システムを接続するためのJavaベースの接続方式)だけでは届きにくいデータにも対応しやすく、追加開発や回避策を減らせます。
  • エージェント型ワークフローを実現しやすい:SAPのデータや操作を、ガバナンスを保ちながら自動化されたエージェント主導のプロセスに組み込みやすくなります。
  • コンプライアンスリスクを抑えやすい: SAP認定を受けており、SAPランタイム要件とクリーンコア要件(clean core:SAP本体への過度な個別カスタマイズを避け、標準性を維持する考え方)にも沿った構成を取りやすくなります。

SAPエコシステム全体へモダナイズを広げる

多くのSAPユーザーは、異種混在のテクノロジー環境を運用しています。たとえば、CRM、ITSM(ITSM:ITサービスを継続的かつ適切に管理するための仕組み)、HCM(HCM:人材情報や人事業務を管理する仕組み)、データプラットフォーム、各分野に特化した業務アプリケーション、パートナーシステムなどです。SAPとこうした周辺環境との接続を、追加のコネクター対応や場当たり的な回避策に頼らずに進められるほど、モダナイズはスムーズになります。

こうした場面で、プラットフォームごとの差が表れます。Boomiは、異なるシステム同士を幅広く直接つなぐことを前提に設計されています。一方、SAP Integration Suiteでは、非SAPシステムとの接続を「Open Connector」モデルで拡張することが多く、将来計画や運用面での依存関係が一段増える可能性があります。

SAPユーザーの約96%は、SAP以外にも接続すべきアプリケーションを抱えています。つまり、真に「SAPだけ」で完結する企業は約4%にとどまるということです。

統合型プラットフォームでツールの乱立を抑える

機能が複数の製品、管理画面、チームに分散していると、モダナイゼーションのスピードは落ちます。Boomiは、重要な構成要素を1つの基盤に集約しています。具体的には、次のような機能が含まれます。

  • 連携(iPaaS:クラウド上でシステム同士の連携を構築・運用できる基盤)
  • API管理
  • ゴールデンレコード、またはデータガバナンス(data governance:データの品質・整合性・管理ルールを統制する仕組み)
  • データパイプライン(data pipelines:複数のシステム間でデータを収集・変換・連携する一連の仕組み)
  • AIエージェント管理とガバナンス
  • EDI/B2B連携、メタデータ管理、ワークフロー自動化などの追加機能

企業がエージェント型プロセス(agentic processes:AIエージェントが判断や処理に関与しながら進む業務プロセス)を取り入れていくほど、どのようなプラットフォーム構成を選ぶかが重要になります。連携、API、データ、エージェント関連ツールが別々のSAPサービスや管理画面に分かれていると、担当間の引き継ぎ、作業の切り替え、エンドツーエンドの運用やガバナンスに余計な負荷が発生しやすくなります。
統合型プラットフォームであれば、その負担を抑えられます。必要な機能が1か所に集まることで、チームは責任分担をより明確にしながら、一貫したガバナンスのもとで、より迅速に業務を進められるようになります。

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軽量ランタイムでハイブリッド連携をシンプルにする

一部の連携をプライベート環境で動かす必要がある場合は、ランタイム(runtime:連携処理を実際に実行する実行基盤)を単なる配置方法の違いとしてではなく、長期的な運用方針の一部として捉えるべきです。重要なのは、短期間で立ち上げられ、連携を動かすためだけに追加のプラットフォーム基盤を大量に抱え込まなくて済む構成を優先することです。

Boomiのハイブリッドランタイム(hybrid runtime:クラウドとオンプレミスが混在する環境で連携を実行できる仕組み)は軽量かつ自己完結型であるため、チームは標準的なインフラ上で、より少ない構成要素でハイブリッド連携を実行できます。その結果、初期構築にかかる時間と継続的な運用負荷の両方を抑えやすくなります。

SAPのEIC(Edge Integration Cell:SAP環境でプライベート実行を行うための分散実行基盤)のような選択肢を比較する場合も、導入時と運用時の負荷を判断材料に含めるべきです。何を立ち上げる必要があるのか、何を継続して運用する必要があるのか、そしてその責任をチーム内の誰が担うのかまで見て判断する必要があります。

「Better Together」で進める連携戦略

よくある反応として、「PI/POの処理はすべてSAP Integration Suiteに移せばよい」という考え方があります。場合によっては、それが適切な選択になることもあります。ただ、本当に重要なのは、単一ベンダーに寄せることで環境全体がシンプルになるのか、それとも複雑さを別の場所へ移すだけなのかを、一度立ち止まって見極めることです。

実務上は、次のように考えるのが現実的です:

  • SAP Integration SuiteはSAP間の連携で特に力を発揮しやすく、あらかじめ用意されたコンテンツを活用できる場面では、導入・変更対応を早めつつコストも見通しやすくできます。SAP-to-SAPでは、比較的低コストで進めやすい選択肢になりやすいです。
  • 一方でBoomi は、ベンダーに依存しない連携に強みがあります。SAPと「SAPと非SAPの連携や、より広いany-to-any連携(any-to-any:特定ベンダーに限らず、さまざまなシステム同士を柔軟につなぐ形態)に向いており、限られたSAP専門開発人材への依存を抑えやすくなります。

これが「Better Together」の考え方です。各プラットフォームの強みが活きる領域に使い分けることで、全体最適のコスト構造を目指し、長期的な複雑さも抑えやすくします。

シンプルに整理すると、次のように考えられます。

  • SAP-to-SAP: SAP Integration Suite (lean on pre-built content where it fits)
  • SAP-to-non-SAP: Boomi for SAP
  • Any-to-any(any-to-any:特定ベンダーに限らず、さまざまなシステム同士を柔軟につなぐ形態): Boomi Enterprise Platform
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PI/POモダナイゼーション戦略をどう整理するか

まずは、自社のシステム構成を大まかに整理することから始めます。連携を次のような区分に分けて把握すると進めやすくなります。

  • SAP-to-SAP
  • SAP-to-non-SAP
  • Non-SAP to non-SAP
  • ハイブリッド環境、またはオンプレミス制約(on-premises constrained:オンプレミス環境の要件や制約により、配置や運用方法が限定される状態)がある連携

こうして整理すると、どこでSAPネイティブな構成が適しているのか、どこで全社的な接続性がより重要なのか、そして運用上の複雑さがどこから生じているのかが見えやすくなります。

PI/POモダナイズの要点

SAP PI/POの標準保守が2027年12月に終了することは、対応を先送りできない明確な契機です。一方で、これは単なる移行対応にとどまらず、より運用しやすく、変更にも素早く対応できる連携基盤へ見直す好機でもあります。

Boomiは、そうしたモダナイズを支えるために設計されています。保守すべきコードを減らし、管理すべき複雑さを抑え、SAPだけでなくその周辺システムまで含めてつなげられる基盤を提供します。変更のたびに大きなプロジェクト化しにくい点も特長です。

PI/POモダナイズ計画について、専門家にご相談ください。Boomi for SAPを見る。 そして BoomiとSAP Integration Suiteを比較する。

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