Boomiは市場動向や組織の成功要因を探るため、ビジネスリーダーへのインタビューを行っています。また、統合戦略やアプローチを議論する時にピザに例えて議論する「ピザの”統合”」に関するユニークな質問もしています。
スティーブ・ルーカス氏はこれまでにもビジネス書の執筆経験がありますが、最新刊『Digital Impact: The Human Element of AI‑Driven Transformation』には、これまで以上の緊迫感を感じているようです。それは、私たちがこれまでにないほどの人工知能とエージェンシック・システムの進化が進む時代に生きているからです。

「AIは今や不可欠な存在です」と彼は語った。「個人的には、AIはインターネット以上のインパクトを持つと信じています。まさに今、この瞬間こそが全てが変わるターニングポイントなのです。」
スティーブ・ルーカス氏は、これまで複数の企業でCEOを務めてきた経歴を持ち、30年近くにわたりソフトウェア企業の成長を牽引してきました。現在はBoomiのCEOとして、デジタルシステムの断片化という本質的な課題を解決し、AI エージェントの管理を可能にすることで、AI時代に組織が成功できるよう支援しています。
ただし、ルーカス氏の著書『Digital Impact』は、製品の売り込みではありません。テクノロジーが人々の役に立つ方法、そしてすべてがつながることで世界がより良くなるという壮大なビジョンが描かれています。彼はこの考え方がビジネスにもそのまま当てはまると考えており、本書では、いま最も必要とされている「スムーズに機能するデジタルプロセス」を組織が構築するためのロードマップが提示されています。
「『Digital Impact』は、混乱を解消するための書です」と彼は続けます。「複雑さを取り除き、AIと共に組織が持続的に成長していくための道筋を、責任ある、倫理的な、そして組織内の人々を力づける形で示しています。」
私はBoomiの最新のレベニュー・キックオフ・ミーティングの場で、ルーカス氏と対面する機会に恵まれました。そこで私たちは、古くからの課題である「システム間の非連携」や、「エージェントの乱立」をどう管理するか、さらにルーカス氏が1型糖尿病との闘病経験を経て、なぜデータ連携に特化した企業のCEOを志したのかについて聞きました。このインタビューは、読みやすさと長さの調整のために一部編集されています。(「5分間インタビュー」というタイトルにしては少し長めかもしれません)
この本を読んで得られることとは?
スティーブ・ルーカス:私はソフトウェア業界で30年間働いてきましたが、業界では常に「これがあれば、もっと簡単で便利になる」と約束され続けてきました。オンプレミスからクラウド、そしてモバイルへと進化し、今はAIの時代です。再び「これで楽になる」と言われていますが、現実のIT環境は混沌としています。企業はアプリケーション、データ、APIを整理し、スムーズに機能する業務プロセスを構築することに苦労しています。これは昔からずっと続いている課題です。私の著書『Digital Impact』では、これらの課題に対して、解決策を細かく分解して提示しています。最終的に、組織がAIを活用して状況を改善できるよう導くことを目的としています。
なぜAIを語る上で「人間的要素」が不可欠なのですか?
スティーブ・ルーカス: AIは人間なしでは意味を持ちません。第一に、AIという存在を生み出したのは私たち人間です。第二に、AIが成功するためには人間の存在が不可欠です。AIがどれだけ進化しても、常に「人間が関与する構造」は残ると思います。AIによって人間の仕事が奪われるという話をよく耳にしますが、私はそうは思いません。むしろAIによって、私たちは「スーパー・ヒューマン」になると考えています。AIはあらゆるものを変革する力を持っているのです。この本を書いていて一番心を動かされたのは、AIの裏側にいる「人間」に焦点を当てられたことです。テクノロジーによって素晴らしい成果を上げた組織の事例を紹介していますが、すべて現実の世界で起きている、実用的かつリアルなストーリーです。AIと人間がともに未来を形作っていく、その姿を描いています。
実際の事例をいくつかご紹介いただけますか?
スティーブ・ルーカス:本書では、語らずにはいられないような感動的なストーリーをいくつも紹介しています。たとえば、アメリカ癌協会、オーストラリア赤十字社、Tony’s Chocolonelyなど、社会的使命を持つ多くの組織が、真の意味での「デジタル・インパクト」を実現しています。特にオーストラリア赤十字社の成功は、プロセスを統合し自動化したことそのものではありません。大切なのは、その結果として「人の命を救い、人生を変える」という成果を生んでいる点です。本書に登場する多くの組織が、まさにこうした取り組みをしており、その意義は非常に大きいと感じています。多くのビジネス書は、「より良い業務プロセスで効率を高める」といった概念的な内容にとどまりがちですが、私は現実の世界で「人が実際に変化を起こしている」ストーリーにこそ魅力を感じます。
本書を通して「つながりの重要性」が一貫して語られていますね。
スティーブ・ルーカス 「つながり」の力には、人間にとって深い意味があります。それは数万年前、洞窟の壁に描かれた絵にまでさかのぼります。今でもその絵を見れば、当時の人々が何を伝えようとしていたかがわかります。それほど、「つながること」は時代を超えて根源的な価値を持っているのです。そして現代では、スマートフォン、インターネット、AIといった技術が連鎖的に登場し、接続手段は飛躍的に進化しています。けれど、新たなつながりを作るたびに、同時に複雑さも増しているのが現実です。ソフトウェアの世界でも、断片化というかたちでその課題が顕在化しています。
ほんの10秒で説明できるほど単純な話ですが、商用ソフトウェア同士はまったく連携していません。MicrosoftはOracleと連携せず、OracleはSAPと連携しません。それぞれがデータを囲い込むウォールドガーデンを作り、競合と接続するインセンティブを持っていないからです。しかし、ビジネスをスムーズに進めるには、こうした壁を壊して、シームレスな接続を実現する必要があります。だからこそ、私たちBoomiは「つなぐこと」に注力しているのです。
AIはその複雑さをさらに加速させているということですね?
スティーブ・ルーカス :その通りです。私が初めてChatGPTを使ったとき、おそらく皆さんと同じようなことを試しましたよ。「ヨーダの言葉でスター・ウォーズの詩を書いて」みたいな。驚きでしたね。まるで90年代半ばに初めてインターネットを使ったときのような衝撃で、背筋がゾクッとしました。これは世界を変えると直感した瞬間です。この2年間に起きた変化は本当に目まぐるしくて、かつては数年かかっていたようなイノベーションが、今では1週間で起こっています。従来のエンタープライズソフトウェアは、「もし〜なら、〜せよ」といったロジックベースの道をたどってきました。しかし今はまったく違います。AIが登場したことで、ソフトウェアは「考える」力を持ち、意思決定を行い、時にはプログラムされた手順を無視して、より良い道を選ぶことすらできるようになったんです。これは非常に強力です。私の著書『Digital Impact』では、いままさに開かれたパンドラの箱が、私たちの組織に何をもたらすのかを掘り下げています。
そのパンドラの箱をどう安全に開けばいいのでしょうか?
スティーブ・ルーカス: AIを安全に使うためには、まず基盤づくりが欠かせません。良質なデータがなければ、AIは何の意味も持ちません。「ゴミを入れれば、ゴミが出る」という言葉は、今も変わらず真実です。次に必要なのは、そのデータを円滑にAIに受け渡せる体制です。AIの性能は、与えられる情報の質に比例します。AIが組織の中で孤立して機能するようでは意味がありません。AIは既存のビジネス全体にしっかりと連携されてこそ、真価を発揮します。だからこそ、私はBoomiの社内でもAIをすべての業務にどう組み込むかについて、常に多くの時間をかけて議論しています。
自律型エージェントの恩恵にはリスクも伴うとおっしゃっていましたね。そのリスクとは?
スティーブ・ルーカス :今やAIエージェントは至る所で語られています。超生産的なワークフォース、自己適応型のプロセス、より賢く迅速な意思決定、そしてコスト削減の最大化──その可能性は無限です。確かに、それらは非常に魅力的ですが、もし適切に管理されなければ、AIエージェントは大きなリスクになり得ます。AIがもたらす「混沌」を制御する術を持たなければ、組織全体に悪影響を及ぼしかねません。たとえば、セキュリティの脆弱性やデータ漏洩のリスクです。そうしたリスクが現実となれば、まさに悪夢です。適切な管理体制を整えずにAIエージェントを次々に投入してしまえば、失敗は避けられません。
AIを迅速に導入しつつも、責任あるかたちで進めるには、どうバランスを取るべきでしょうか?
スティーブ・ルーカス: AIの可能性とリスクは、まさに紙一重です。誰もが知っているブロックバスター・ビデオ(Netflixに取って代わられたレンタルビデオ大手)の失敗の教訓のように、行動が遅ければビジネスは時代に取り残されます。そしてAIの時代には、同じような事例が何千と生まれるだろうと私は思っています。だからこそ、私たちは競合より一歩先に出ようとする強いプレッシャーを感じています。しかし、その焦りの中で説明可能性を犠牲にしてはなりません。「なぜこの人を採用すべきなのか、なぜあの人ではないのか」──AIの判断には、その理由が明確であるべきです。もしAIがある人物に融資を否決するなら、その根拠は説明可能でなければいけません。この微妙なバランスを取ることは簡単ではありませんが、正しいインフラ、プロセスへの理解、そしてAIを導入するための適切な計画があれば、実現可能です。実際、私たちBoomiが提供するインフラのおかげで、自信を持って前に進んでいるお客様が数多くいらっしゃいます。
1型糖尿病であるご自身が「つながり」に特化したソフトウェア企業を率いることに、偶然はないとおっしゃっていました。その意味を教えていただけますか?
スティーブ・ルーカス:私は若い頃に1型糖尿病と診断されました。つまり、免疫システムが「膵臓なんていらない」と言ってしまうんですね。その結果、一生インスリンに頼る生活になります。当時は、1日10回指に針を刺して血糖値を測り、さらに1日10回インスリンを自分で注射するという生活でした。まさに毎日が化学実験のようなものでした。でも、「つながり」が私の人生を一変させてくれました。今この瞬間も、私は片側の腹部にインスリンポンプ、もう片側にセンサーを装着しています。この2つのデバイスは互いに連携していて、私にとってはより豊かな人生を可能にしてくれる存在です。これが、私が「つながり」に強くこだわる理由です。インスリンポンプとセンサーの連携は、そのまま企業活動にも当てはまります。すべてがつながって連動しているとき、企業は健全に機能するのです。
なぜこの本を書こうと思ったのですか?
スティーブ・ルーカス:ソフトウェアを導入すること自体を目的にしているわけではありません。誰もがDX(デジタルトランスフォーメーション)をすることそのものを目指しているわけでもないんです。人々の人生を変えたい。命を救いたい。人々をもっと幸せにしたい。組織が持っている本来の使命こそが、私が本で伝えたかったストーリーなんです。今、私たちはこれまで誰も経験したことのないレベルで、テクノロジーが融合・収束する時代に立っています。正直、これから何が起きるかを完全に予測するのは難しい。でもひとつ言えるのは、AIによってすべてが変わるということです。2〜3年前まではSFのように思われていた、パーソナライズされた医療や自己最適化するビジネスのような話が、今やフィクションではなく現実になっています。この本は、読者の視野を広げ、この変化は20年後でも10年後でも5年後でもない、今この瞬間に起きていることなんだと理解してもらうことを目的としています。そして、これらのテクノロジーを使って、私たちはより良い世界を築いていくことができるのです。
最後に、恒例の質問をさせてください。IT業界では“統合(インテグレーション)”がキーワードですが、あなたならピザをどう“統合”しますか?
スティーブ・ルーカス:私は「シュプリーム・ピザ」派です。タンパク質、炭水化物、脂質が完璧に統合されたピザ。それには「シュプリーム(至高)」と名付けられているだけの理由がありますよね。
スティーブ・ルーカス氏について
役割 :Boomi会長兼CEO
家族:妻シェリー、子供2人
ホーム:デンバー
大学:コロラド大学でビジネス学士号取得
経歴:スティーブ氏は、世界有数のクラウド企業において上級幹部職を歴任してきました。主な企業には、Marketo、iCIMS、Adobe、SAP、Salesforce、BusinessObjectsなどが含まれます。CEOとしては、MarketoおよびiCIMSの成長と変革を牽引し、いずれの企業においても数十億ドル規模の成功した買収を実現しています。著書に『Engage to Win』などがあり、糖尿病の治療法の確立に向けた啓発・教育・資金調達活動にも積極的に取り組んでいます。
豆知識:スティーブ氏は息子さんと一緒に、空いた時間に高性能車のレストアや改造を楽しんでいます。
『Digital Impact』をなぜ今読むべきか?スティーブ氏が語る短編クリップをご覧ください。
『Digital Impact:AIがもたらす変革と人間の役割』は、4月15日に発売です。本日より予約受付中です!
